長い時間をかけて、一歩一歩、復職への道を歩んでこられた方たちです。
職場で経験していたときと同じ種類の苦しさや不安をリワークの中で再体験されながら、ご自身のテーマを休職の時間の中で発見し、その課題に向き合い、取り組んでこられた方たちでした。
リワークに参加される中で、これまでは嫌で避けていた経験に対して、挑戦しようとされました。そして実際に挑戦されました。そして、これまでは回避していたことにも、取り組むことができる自分自身を発見されたと思います。
リワークに参加される中で、これまでは見るのが不安で目を閉ざしていた問題に対して、目を向けようとされました。そして実際に目を閉ざさず、見ることをされました。そして、これまでは見ないでいたことにも、向き合おうとしている自分自身を発見されたと思います。
リワーク卒業されたお二人が丁寧に時間をかけて、変化されていったプロセスがあったように、思っています。
お二人の生き生きとした表情は、それを物語っていました。
リワークを卒業され、職場復帰を成し遂げられたお二人に、心から「おめでとうございます」とお伝えしたいと同時に、卒業されたお二人が、リワークルームにおられなくなることに、寂しい思いもします。
それだけ、お二人と、濃密で大切な時間をリワークで共に過ごしてきたからだと思います。
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卒業されたお二人もそうだったと思うのですが、休職されてリワークに参加する際には、不安でいっぱいのスタートだと思います。「リワークという新しい環境、更にはそこで出会うメンバーとスタッフに、私は馴染めるだろうか?」
「グループにうまく入れるだろうか?」
「プログラムについていけるだろうか?」
「リワークに参加しても、これから先、自分はどうなるのだろうか?」
不安のいっぱいの中、それでもリワークに粘り強く参加されていくと、あれほど不安と緊張でいっぱいだったリワークという場所が、その方にとって徐々に、とても安心できて、楽しめる場所に変化してくるときがあります。
同じプログラムに参加し、作業を共にし、汗を共に流し、笑い、たくさん会話をする時間を持つことで、メンバー同士の絆が深まっていくのだと思います。
メンバーとスタッフとの間の信頼関係が形成され、メンバーさんがスタッフを復職への伴走者として経験されていくこともでてきます。
ここまで来たとき、リワークという場所は、そのメンバーにとって、大切な居場所となっていると思うのです。
それは、メンバーの皆さんを見ていて、私に思われることです。
居場所となったリワークルームは、その方にとって、安心できて、くつろげる場所でしょう。
居場所とは、別の言い方をすれば、素直な自分、弱い自分を出すことができる場所。失敗することを恐れなくても済む場所。ここに自分がいるな、と思える場所。
卒業をされたお二人にとっても、リワークルームが、居場所となっていたように思います。
そして、お二人がリワークの卒業を意識し、復職に向かわれるようになってからは、リワークの持つこの居場所的な要素を、いかにして職場という仕事の場に持ち込み、居場所をリワークから職場に移していけるのか、ということに、苦しみながらも奮闘されていたように思いました。
卒業されたお二人は、職場に戻られた今後、その作業に取り組み続かれていかれると思います。その前途が良いものとなるように、願わずにはおられません。
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確かに職場はリワークルームとは違います。職場という場所では、リワークルームのようには自分を開示することはできないでしょう。そこには、仕事ならではの駆け引きもあるかもしれないし、評価もあるかもしれません。苦手な上司や同僚、部下もいるかもしれない。職場は、しばしば、葛藤にまみれた人間関係を私たちに強いてきます。そして、なかには、職場での仕事自体が、面白くなかったり、苦しかったり、負担だったりもする場合もあります。
そういう職場を、一体どうやったら、リワークのような居場所として感じられるのか?
それはとても難しい問題です。
ただ、休職されたメンバーの方が、「リワーク・ルームに、わたしの居場所がある」と感じられたこと自体が、その方を今後も支えてくれることはあると思うのです。
苦しさに満ちた職場にいて、休職に至り、不安いっぱいでリワークに参加してから、リワークでの時間を積み重ね、仲間との絆を徐々に深め、「リワークが今のわたしの居場所だ」と感じられるようになった経験。
そうした経験そのものが、何かを教えてくれると思います。
「リワークでは安心できている自分が、なぜ職場ではあれほど苦しかったのか」
「リワークで安心できて、自然に振る舞える自分とは、一体どういう自分なのか」
こころの居場所を経験できたとき、その経験そのものを、考えてみること。
リワークを卒業されるお二人とのリワークでの時間を振り返りながら、そして、今これからもリワークルームでの時間を重ねていかれるメンバーさんの未来に思いを馳せながら、そんなことを思いました。