●うつ病とは
うつ病は、こころが快活さを失い、その働きが抑え込まれてしまった状態です。こころの働き(脳の精神機能と言いかえてもよいですが)とは、簡潔に表現すると、①感じること、②考えること、③行動すること、の3つになります。
①感じることが抑え込まれると、世界は色彩を失ったかのように陰鬱に感じられ、物悲しさ、孤独感、虚無感といった重苦しい感情にこころは沈んでしまいます。興味・関心があったはずの物事にもこころが動かず、喜びを感じなくなります。
②考えることが抑え込まれると、頭の働きが鈍くなり、物事の理解が難しくなり、簡単な決断も出来なくなります。思考そのものが悲観的になり、自分を責め、生きていても仕方がないといった自殺念慮も認めるようになります。
③行動することが抑え込まれると、体が鉛のように重たく感じ、物事に取りかかることが億劫になり、少し活動するだけでも疲れやすい状態になります。これらがうつ病の典型的な精神症状です。
さらに、不眠、食欲不振、体の痛み、性欲減退、めまい、動悸など様々な身体症状が認められるケースも少なくありません。
ちなみに、上記①から③のこころの働きが、過度に亢進した場合は躁状態となり、現実吟味、整合性を失ってしまった場合は精神病状態となります。
●うつ病の治療
- ○急性期
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うつ病の初期治療で、まず必要なことは、休むことです。億劫で行動に取りかかれない、物事に集中できない、すぐに疲れてしまうような症状が重度であれば、その状態が回復するまで静養する必要があります。ここで大事なことは体だけでなく、脳を休めることです。うつ病ではセロトニンやノルアドレナリンなど脳の神経細胞同士の情報を伝えるための物質にアンバランスが生じてしまい、不安を感じやすく、リラックスできない状態になります。この神経伝達物資のアンバランスを改善し、脳がしっかり休息をとるために薬による治療が重要となります。
- ○回復期
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療養してある程度疲れがとれてくると、少し休み方を変えなければなりません。いたずらに横になっていると体力が落ちてきますし、無為に過ごす時間が長くなればなるほど社会復帰への不安が強くなります。運動や日光を浴びることで、脳が活性化しますので、朝起きたら散歩をするなど少しずつ活動量を増やしましょう。大まかな行動目標を設定して生活記録をつけることも大切です。自分の状態を客観的に知ることで焦りが軽減してこころが落ち着きます。
- ○再発しないために
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活動的になり、いきいきした感情が戻ってくれば、おのずと社会復帰を考えるようになるでしょう。同時に、「また会社に戻ったら再発しないか?」という不安も強くなります。再発予防は、どれだけストレスと上手く付き合えるようになるか、どれだけ精神的な支えを作れるのか、ということがポイントであるようにと思います。うつ病になりやすい方は、考え方や人との付き合い方に特徴的な偏りがあり、力を抜くことが苦手な人が多いようです。柔軟な考えを持てるようになること、人と支え合いの関係を作れること、趣味や生き甲斐を多く持つことが、再び辛くなった時にあなた自身を助けてくれるでしょう。
当院では、回復期の治療と再発予防のために、リワーク・プログラムを行っております。ストレスマネージメントやコミュニケーションスキルを他の参加者とともに学んでゆくことで、生活リズムが整い、心身の機能回復が促され、人との関わり方が上手になってゆき、社会復帰への自信へとつながってまいります。