「和 -なごみ-」の一般外来
樹木医という職業があります。病んだ樹木や老木を保護する「木のお医者さん」です。彼らの仕事のポイントは「待つ」ことだそうです。加える人手はほどほどに、樹木が本来持っている生命力を上手に引き出し、自然治癒を根気強く待つのです。
このことは、心の病気の治療とよく似ています。
樹木医はそれぞれの樹木の個性をよく理解しています。それぞれの樹木がどのような環境を好み、どのような速さで成長し、水や日光がどれくらい必要なのかについて。
ですから、私もご本人様をよく理解することから、治療を始めます。十分な時間をかけて、症状とその背景に抱えておられる問題を一緒に考えてゆきます。
人手を加える部分で言えば、水や肥料に当てはまるものは、お薬やカウンセリングとなります。
これらは苦痛を和らげ、心の栄養となります。 土を入れ替え、日当たりの良い場所に移すことは、ご家族や職場との関係を調整することに当てはまります。ご本人様がゆったり静養できる環境を整えることはとても重要です。
そして、心の病気の治療でも「待つ」ことは大切なポイントです。体の病気は検査データや傷口の様子によって治る経過が予測できますが、心の病気は目では見えません。先が見えないとご本人様も周囲の方も焦ります。けれど、やみくもに水や肥料をやり過ぎるとかえって樹木を傷めるように、早く治そうと焦りすぎても、あまりよいことはないようです。やはり心の傷が癒えるためには、時間が必要なのです。
心には本来、健康に向かう力がある、と私は信じています。私たちの役目は、それを引き出すためのお手伝いです。ご縁があって出会った方それぞれの回復を見守りつつ、その道程をお供をさせて頂ければ幸いです。
●外来治療の内容
1、精神療法
担当医がお話をうかがいながら、ご本人様の抱える症状、悩みについて一緒に考え、適宜助言を行います。お話しされるだけでも、これまで一人で抱え込んでいた問題が医師と分かち合われ、心が軽くなる事もあります。また、心が余裕を失っているときは、一つの考えにとらわれやすく、視野が狭くなりがちです。お話されながら医師と一緒に考えることで、頭の整理、心の整理が少しずつできるようになります。そうすると、別の角度から物事をとらえたり、柔軟な考え方ができるようになり、解決の糸口になることもあります。診察室でのお話の内容は、ご本人様の同意がない限り、外部へ漏れることは一切ありませんので、どうぞ安心してお話し下さい。
2、薬物療法
心の病気になると、身も心も疲れ切ってしまいます。だからといって、「ゆっくり休もう」「気持ちを楽に持とう」と思っても、気が焦るばかりでうまくいきません。つまり、心の病気になると、休むことそのものが難しくなってしまうのです。そこで、お薬の力を借ります。お薬は、脳の神経伝達物質を調整することで、疲れた神経を効果的に休ませる働きがあります。お薬を飲んで、ゆっくり心を休めつつ、精神療法を組み合わせる事で治療はより効果的なものになります。 使用するお薬の種類は、うつ状態に用いる「抗うつ薬」、睡眠を助ける「睡眠導入剤」、緊張や不安を鎮める「抗不安薬」、他にも「抗精神病薬」、「漢方薬」などがあります。当クリニックで薬物療法を行う場合は、必ず説明をさせていただいた上で、ご本人様に合わせた適量だけを処方する方針をとっておりますので、ご不明な点がございましたら担当医にご相談下さい。
3、家族面談、職場の方との面談
余計な心配をかけたくなかったり、理解されないことを恐れたり、誤解される不安があったり、いろんな理由で心の病気は一人で抱え込まれることになります。それはとても苦しく、孤独なことです。できれば、苦しみを一人で抱え込まずに、信頼できる方と分かち合って頂きたいものです。そばにおられる方の理解が得られれば、安心して心を休めることができるようにもなります。 当クリニックでは、ご本人様が希望される場合、必要に応じて、ご家族や職場の方との面談を設定しております。そばにおられる方に、病気について、直接伝えにくいことについて、医師を交えて話す場を必要とされるなら、いつでも担当医にご相談下さい。
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