長い間一緒に過ごしたメンバーとの別れをグループは経験しました。
CRESSの特徴は、メンバー同士が相互に影響を与え合えるグループを目指すことです。プログラムにそれは反映しています。
「グループ作業」では、グループを職場に見立てて或るプロジェクトに取組みます。納期も決められています。グループ作業では、各メンバーの個性が明確に出てきます。ここで多くのメンバーが、メンバーとの人間関係に悩みます。自分の姿をグループで再現することで、仕事と人間関係に悩むことが、グループ作業の目的の一つです。この悩みをグループに表現して、メンバーとスタッフで乗り越えるのです。
「グループセラピー」では、リワークのグループ内で起こっている体験を、グループで話し合います。リワークのメンバー同士の人間関係を、その当事者同士で語り合うのです。この時間は、非常に辛い時間になることがあります。誰かに対して嫌だったことや、疑問に思っていたことが話されることがあるからです。しかし、休職するまでは陰性な考えが気持ちは表現できず堪えるしかなかったメンバーが、グループセラピーを通じて、不安や不快だった思いを言葉にする機会がこれまでも度々ありました。当然、グループに緊張が走ります。しかし、CRESSのグループの力はここで発揮されます。ここで誰かから明らかにされた陰性な体験は、治療的で成長的な変化へと実を結ぶきっかけとなります。そういう体験をCRESSのメンバーはしてきました。
それ以外のプログラムでも、CRESSではメンバー同士で考え、相互作用する方法を重視しています。再発予防に役立つような、コミュニケーションに関する知識を学ぶプログラム(アサーション、ストレスマネージメント、認知行動療法)でも、メンバー同士でコメントし合うことを重視します。お互いにフィードバックし合ってもらいます。そういう相互作用が上手くいかない時には、今のグループに何かが起こっています。メンバーがバラバラになっているかもしれない。拒絶的な関係性がメンバーのなかに生まれているかもしれない。今自分が所属しているグループのことを、自分とグループとの関りを通じて、CRESSでは考えるようにしています。
健康的な生活習慣を目指すプログラム(セルフチェック)でも、CRESSでは、メンバーで一緒に生活改善を目指すことに意義を置いています。一人で睡眠を整えるのではない。睡眠が不調のメンバー同士が、一緒に良い睡眠を目指すのです。生活習慣の改善が上手くいかなくて悩んでいる者同士が、今の生活を報告し合い、問題を共有します。改善出来たメンバーの取組みを直接聞いて、参考にしたり、実際に取り入れるようにしてみます。一人では挫けてしまうことも、メンバー同士で励まし合います。諦めずに、健康的な生活を目指すのです。
プログラムの時間だけに限りません。ブログラム以外の時間も、CRESSではメンバー同士が相互に影響を与え合う治療的な時間になることを目指しています。
CRESSでは、学校のように「当番」という仕事がメンバーに与えられます。当番は、4人くらいの小グループで構成されます。月に4回くらい当番が回ってきます。当番になると、朝10時にリワークに来る必要があります。リワークの始業時間は10時半です。始業時間までの30分間に当番は、朝の準備の仕事をするのです。例えば、机と椅子運んで並べます。リワークルームにあるキッチンで、お湯を沸かします。こうした作業を4人ですると、必ずそこでメンバー間の意識的・無意識的な相互作用が起こります。例えば、当番のうちの1人が、10時に来なかったら。他の3人は揃っています。ここで3人がどういう体験をするか。そして、当番以外のメンバーの中に、この場にいるメンバーがいるでしょう。当番以外のメンバーが、何を体験するか。そして、10時に間に合わなかった1人が、リワークに着いてからどういう体験をするか。CRESSでは、「たかが机出し。些細なことだ」とは考えません。この朝の机出しを巡る体験こそが、自分を知る体験になりうると考えます。4人の当番はもちろん、当番以外のメンバーも。この「些細な」机出しに全く着目できい人が、職場で自分が同僚と一緒に仕事をするときに困っていたことを、復職後に乗り越えられるとは思えません。
CRESSでは、昼休みをリワークルームで皆で摂ります。昼休みの食事で、たくさんお話しているメンバーもいるし、ほとんど口を噤んでいるメンバーもいます。たくさん話している人は、どうして話せるのか。話さない人は、どうして話さないのか。良い悪いではなく、昼休みにグループの中で体験していることに注目して話すことが、自分が今のリワークのメンバーに感じていることを教えてくれます。例えばグループセラピーの時に、誰かがこの昼休みでの或るメンバーを振舞いが気になっている、と切り出すことが出来たら。あの昼休みで心の中で何を感じて過ごしているのかが、メンバー同士で話すことが出来ます。そういう話し合いが出来るように、スタッフは働き掛けるように努めます。それが、メンバーがグループの治療的な力を体験できるチャンスだと判断するからです。
リワークに参加しているメンバーの皆さん、粘り強くリワークに参加をして下さい。休職してリワークに来る人の中には、心を閉ざし、外の世界と敵対している人もいます。こういう方は、常に脅かされている不安でいっぱいです。自分を守ろうと、心を閉ざします。話さない、話せない、という表現となります。リワークを継続できずに、(職場と同じように)休みがちになり、リワークの中断が起こりやすくなります。
程度の差はあれ、休職を経験したメンバーは、他人が信じられない不安があります。心を閉ざしている。自分の思っていることを表現することは怖いのです。
変化に繋がる体験が必要です。それは、一人頭の中で考えていても、起こりません。
CRESSに粘り強く参加すること。そこで起こっている体験にこそ、最も大事なことを教えます。目線を低く。今自分がCRESSで体験していることを、グループの中で、スタッフとメンバーという他人に話すこと。そういう風にして考えるのです。それが出来るように、私たちスタッフが手伝います。
こういうことをされた人は、リワークを卒業するとき、振り返って、それが大事だったと思えるはずです。