だいぶ肌寒くなってきました。
風邪を引かぬよう、健康管理に注意したいものです。

さて、今日は、ソーシャル・スキル・トレーニングというプログラムを紹介します。
CRESSでは、Social Skill Training(社会技能訓練、以下、SST)をプログラムに取り入れています。
SSTでは、ロールプレイを行います。
ある社会場面を設定して、そこで何らかの問題に直面した主人公が、コミュニケーションを通じて、いかにしてこの問題を解決していくかに取組むのです。

CRESSでは、職場の状況を設定しています。
ロールプレイに出演するのは、基本的に3人です。主人公が当然いて、他は、例えば、上司、同僚など、その状況に応じて変わってきます。
ロールプレイに参加しないメンバーは、ロールプレイを外側から観ています(オブザーバー)。オブザーバーは、ロールプレイが終了してから、気付いたことを主人公にコメントします。
主人公を含めて参加者全員でロールプレイを振り返り、ロールプレイの中で一体何が起こっていたのか、どうしたらよりよいコミュニケーションができるのか、意見を出しあい、考えを深めます。

SSTで主人公が直面する状況は、とても難しい場面です。例えば、厳しい上司に悩んでいたり、また別の回では、部下が言うことを聞いてくれなくて関係がギクシャクしている主人公が設定されるかもしれません。仕事に忙殺されているのに、さらに仕事を頼まれる羽目になるSSTもあります。
ですから、SSTで主役を自らやってみることは、とても勇気が要ることだと思います。
「皆が見ているところで、上手にできなかったら……」という不安や恥しさもあるでしょう。
なかなか主人公が決まらない回もありますが、そんなときでも、誰かが主人公を引き受けてくれます。

SSTは、上手にロールプレイすることが目的ではありません。
表面的なコミュニケーション・スキルを駆使して、とりあえず急場を凌ぐことができたとしても、それは本質的な問題解決にはならないからです。

困った状況や悩ましい人間関係に陥っている主人公に、わが身を置いてみることで、心にどういう感情や考えが湧き上がるのかを体験し、そういう自分をしっかりとつかまえることが、SSTではとても大切です。それは、多くの場合、普段生活しているときには、あまり見たくないネガティブな気持ちや考えでしょう。
それは、普段は意識しなくても済んでいる気持ちかもしれません。しかし、休職前、そのメンバーが職場で悩みの渦中にいたときには、SSTと似たような状況に置かれていて、実際にネガティブな気持ちを経験していたのかもしれません。
職場にいたときには、なかなか意識することが難しかった自分の気持ちを、SSTという人工的ではあるけれど、現実とも通じ合ったロールプレイの場所で、誤魔化さずにしっかりとつかまえること。
その上で、困った状況や、ネガティブな気持ちを、他者とのコミュニケーションに踏み出すことで打開していこうと、SSTでは試みる訳です。

「上手くロールプレイしなくてはいけない」という気持ちは、「自分をかっこ良く見せなくては」という気持ちとつながっています。
SSTでは、ロールプレイ体験を通じて、自分が何に困っているのか、悩んでいるのかを発見し、それをコミュニケーションで解決していくにはどうしたらいいのかを、一人ではなく、皆で考えよう、というプログラムです。

そういう目的を共有しているメンバーたちが、毎回真摯にSSTに取り組んでいます。そういう姿勢で取り組んでいるSSTは、深いところで、現実の職場での体験とつながっていますし、そこで皆で考えた様々なアイデアや見方は、各メンバーの心に、もう一つの声となって、取り入れられていくことでしょう。





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