以前のブログで、アートセラピーの時間で創った「リレー小説」を紹介しました。
リレー小説をつくりました(2013年3月1日の記事)

今週、再びアートセラピーで、リレー小説をつくりました。

リレー小説は、文字通り、リレーのバトンを渡すように、参加者全員で小説の文章を順番に繋げていき、一つの小説をつくり上げるものです。

① 最初の人が、小説のタイトルと冒頭の文章を作ります。
② 二番目の人は、この冒頭の文章を受けて、続きを書きます。
③ 以下、この作業を、グループのメンバーで順々に行い、ストーリーを展開させていきます。
④ 最後の人は、小説の結末を書くことになります。

今回は、メンバーとスタッフの総勢11人で、リレー小説を二作、書き上げました。


最初の作品です。
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「さらば、青春の日々よ」
いつも目覚めのいい私が、今朝に限ってまぶたが重い。(Aさん作)
いつになくコップ一杯の水がうまく感じる。(Bさん作)
いっきに水を飲みほすと、ふと窓の外に目がいった。雨だ…。(Cさん作)
田園風景の中、水車の音がきもち良い。(Dさん作)
家の外からは、カエルの合唱が聞こえる。(Eさん作)
どうしても あの人に会いたくて、家を出た。(Fさん作)
お気に入りの傘をさし、あの日と同じブローチをつけ、深呼吸をしてから一歩をふみだした。(Gさん作)
向かった先は、あの日別れた場所。いるはずのない面影を探しに…。(Hさん作)
最後に二人で見た飛行機雲を思い出しながら、私は一人で、あの日の彼の姿を頭の中で思い描いた。(Iさん作)
今の姿ではなく、あの時の彼が現れるのを待ちながら、そっとブローチをはずした。(Jさん作)
「…馬鹿よね、私」 あの日見た飛行機雲のように、遠くへと、はずしたブローチを投げた。(Kさん作)
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いかがですか? 最初に「さらば、青春の日々よ」というタイトルが付けられた訳ですから、いかにして、そのタイトルに見合うストーリーをみんなで協力して創り上げていくかが、大切になってきます。
前半部は、静かな情景描写が続きました。いわば、起承転結の「承」です。
それが、Fさんの文章によって、ストーリーに動きと変化が生まれました。「転」です。
ここから一気に、このリレー小説の主人公が、失われた過去(別れた恋人でしょうか)に出会おうとしていることが、知らされました。ブローチという小物が、彼との思い出を象徴しているようです。
しかし、最後、主人公は、ブローチを投げて、彼の喪失を受け入れたようでした。
これは、見事に、「さらば、青春の日々よ」というリレー小説となりました。
喪失感と哀しみが漂っています。



さて、二作目です。
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「こんちくしょう!」

まったく腹のたつ一日だ。(Kさん作)
朝、食べた鯖(さば)ずしがあたって腹がいたい。(Jさん作)
しかも、今日は一ヶ月前から楽しみにしていたAKBのコンサートだ。(Iさん作)
私はセンターでみんなを引っぱらないといけないのに!!(Hさん作)
そうしなければAKBのみんなを守ることは出来ないのだ。(Gさん作)
そうだ、今日はきんたろうさんに出てもらおう。(Fさん作)
いや、まてよ。そんなことがバレたら、私はクビになってしまう。(Eさん作)
「ハメられた」 昨日もらった鯖ずしは、「明日朝食べてネ」と渡されたもの。いつもと違う赤い夕日ではなく、やけに青く感じた。この思いをどこかで返さねば。(Dさん作)
「こんちくしょう」 あいつは必ず毎日、あの店へ立ち寄っていたはず。まちぶせてどうにかしてやらなくちゃ、腹の虫がおさまらない。(Cさん作)
フライングゲットの「バカヤロー!!」 やるなら今でしょ!!(Bさん作)
おれは、鯖ずし専門店「AKB」に殴り込んだ。「おい、オヤジ!! これはどういうたくらみだいっ!!」
「まぁまぁ、そういわず。鯖ずし、いつ食べるの?」
「今でしょ!」(Aさん作)
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「こんちくしょう!」という心の叫びのようなタイトル。そして、驚くべき「鯖ずし」の登場。
何よりも、この主人公は一体何者なのか? わかるのは、この主人公が朝から鯖ずしを食べて、お腹をこわしているということだけです。
謎が謎を呼ぶ展開です。主人公は、AKBのメンバーなのか? ファンなのか? いや、コンサートホールの警備員なのか? 果ては、現実離れしたファンタジーに耽っている人物なのか??
主人公が誰なのか、その手がかりがないままに、Dさんの文章が来ました。ここで、「鯖ずし」が、どうやら誰かからのお土産か差し入れであり、主人公が食あたりしたのは、この人物の策略だったことが匂わされます。
「こんちくしょう!」、「バカヤロー!!」。とにかく、主人公は怒り心頭に達しています。
そして……リレー小説は結末に!!
あぁ……Aさんが頭を抱えていたことは、想像に難くないでしょう。
張り巡らされた伏線を、なんとか回収しようと試みるAさん……。

先ほどのリレー小説とは違って、一風変わった小説が出来上がりました。


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リレーのバトンが順調に手渡されて、ストーリーが展開し、プロットが明確になる場合もあれば、伏線が張り巡らされすぎて、最終走者までにはそれが十分回収できない場合もあるのですね。
こういう発見も、リレー小説を経験して、見いだせたことだと思います。

チームの目標は、「全体として、いかにして完成度の高い、面白い作品を作るか」ということ。参加者は、目標を共有しています。
その目標の共有した上で、自分の前を走ってきた人たちからのバトン(ストーリー)を、しっかりと自分が受け継ぎ、それを次の走者への信頼感のもと、手渡していくこと。
そうやって創造されたものが、最初のタイトルを書いたときには想像もできなかった作品となって、結実していきました。

人生のこの時期、この場所で出会ったCRESSのメンバーの皆さんが、しっかりとバトンをつないで創り上げた、大切なリレー小説です。