8. リワークプログラムCRESSでの心の交流
ここまでご覧いただくと、リワークでは、グループの経験を通じたメンバーの心の変化と成長を大事にしていることが、おわかりいただけると思います。リワークのスタッフである臨床心理士・公認心理師、看護師は、個人心理療法も実践する中で、自分だけでは知ることができないその方の内面性を、力を合わせて一緒に考えていくプロセスこそが治療的になる、という姿勢を持っています。ですから、リワークという集団療法でも、メンバーの休職経験を内面的で心理的な観点から理解していくことを大事にしています。
心の真実を深く知る経験を大事にする私たちリワークのスタッフは、リワーク・グループをダイナミックな心であるとも理解します。スタッフは、メンバーの職場復帰という現実を援助すると同時に、メンバーがグループの中の経験から自分自身を深く知っていくプロセスを共にします。そういうリワークの中での経験こそが、再発予防に繋がる本当の力になると考えるからです。
こうした理念のもとリワークでは、メンバー間の相互作用と相互交流が治療的経験の中核だと考えます。例えば、参加状況の異なるメンバーが一つのグループを構成することで、多様な感情や想い、葛藤がグループ内で経験されます(職場もそういう集団だったはずで、あなたは上司や同僚、新人や後輩や先輩に取り囲まれ、様々な感情や想い、葛藤を経験していたでしょう)。
リワークのグループの中で経験する不安や葛藤を一緒に考え、その経験を価値あるものとして共有し伝え合えるメンバーがグループを構成する時、一体何が起きるでしょうか?
そのグループが、ワークできるグループメンタリティ(グループに宿る心の性質)を持つようになるのです。すると、ワークするグループの誕生に寄与している各メンバーの心の中にも、ワークする心が喚起されます。このプロセスは、集団療法の本質です。休職に至って、それまで凍結していたメンバーの心が、リワークで生きたグループを経験することで、息を吹き返す。葛藤や不安を経験し、それを人とコミュミケーションして乗り越えていける、そんな生きた心を持ったメンバーが一人でも多く、現実の職場に向かって行かれることを、私たちスタッフは援助しています。
→このようにリワークでは、参加時期の異なるメンバーによって、一つのグループを構成します。その一方で、各メンバーの現時点での生活リズムや体力、治療経験などの個人差を理解し、それに合わせた対応を行っています。午前だけの参加からリワークを開始するのは、その一例です。また、参加初期のメンバーへの個別のプログラム説明や生活相談、参加中期および後期メンバーへの「職場の方との合同面談」など、そのメンバーの段階に相応しい対応を実施します。さらに、ご家族の理解が特に必要な場合には、「家族面談」を実施することもあります。