5.リワークを利用した復職までのプロセス
① リワークに参加するまで(3回の導入面接) リワークの参加者が定員に達している場合、参加開始までお待ちいただくこともあります。
(1)第1回 導入面接(休職の経緯の確認 / リワークの説明)
リワークに参加希望される方とスタッフとの最初の面接です。リワーク参加希望の方は、事前に、「リワークプログラムCRESS受付票」に休職の経緯などを記入して、第1回導入面接にご持参下さい(当院以外の医療機関に通院中の方は、主治医の診療情報提供書(紹介状)も合わせてご持参下さい)。この受付票に基いて、リワーク参加への動機や意思、休職の経緯を、スタッフがお聞きし確認していきます。休職をどう理解されているかを知るための大事な作業です。同時にスタッフが、当院のリワークについて、説明致します。
(2)第2回 導入面接(生活リズムの共有に向けて / 心理検査)
自己理解の一助にして頂くためにパーソナリティの特徴を見る心理検査を実施します(結果は第3回導入面接でフィードバックします)。リワークで取り組む生活記録表、生活目標の用紙をお渡しし説明します。リワーク開始に向けて現状の生活リズムの共有をスタッフと開始します。
(3)第3回 導入面接(リワーク参加の契約 / 心理検査のフィードバック)
心理検査をスタッフが口頭でフィードバックします。また、当院の判定会議の結果(リワーク参加の可否)を、お伝えします。参加が可能となった方にはリワークの参加ルールなどをご説明して、リワーク参加同意書(契約書)を当院と交します。
② リワークでの復職に向けた取組み(3ヶ月~1年)
実際のリワークは、初期・中期・後期と直線的に進む訳ではありません。リワークでの治療の進展とは、経験が深みを増していくことです。それは、プログラムでの学びやメンバーとの人間関係の中で悩んだり葛藤したりする経験が増し、それをスタッフとメンバーと一緒に考えられる経験が持てるようになることです。
そうしたリワークでの経験があって初めて、「なぜ職場に行けなくなったのか」「再発予防できる自分になれるのか」という問いを考えられるようになります。さらに、リワークの中での治療的進展と、生活リズムや職場との連携といった現実面とが影響を及ぼし合うことで、復職に向けた安定性と改善が獲得されていきます。
(1)参加初期
リワークでの日々のスタートです。最初の1〜2週間は、午前のプログラムの参加で始めます。この間を休みなく参加できたかを確認して、1日(午前・午後)通しての参加に移行します。
参加初期は、新しい環境に適応するための様々な不安を感じるはずです。「プログラムに付いていけるのか」「グループに溶け込めるのか」「休まず参加できるのか」。新メンバーに対しては特に、スタッフがプログラムの説明や生活相談などを実施します。個別対応の場合もあれば、新メンバーでグループを構成して実施する場合もあります。リワークでの経験を積んだ在籍メンバーが、分からない所を教えてくれたり助けてくれる経験もされるでしょう。コミュニケーションのスタートです。
(2)参加中期
プログラムでの経験と学びが積み重なっていきます。最初の不安を乗り越えて、リワークが安心して楽しい場所になってくるメンバーもいます。
しかし、リワークでの治療的経験が深くなると、表面的な楽しさだけでなく、様々な葛藤や苦しみを経験するようになります。リワークの中で職場の自分がおのずと再現されていくのです。つまりリワークの中で、休職に至った職場の自分自身と再会することになります。この再会は苦しい経験です。しかし、これが変化へのチャンスです。リワークの中で再現した困難を、スタッフとメンバーと共に考え乗り越えていく取組みこそ、復職に向かうための必須の作業になります。
参加中期には、復職の土台となる生活リズムが整ってくることが大事です。また職場との連携と相互理解にも踏み出す必要があります。職場との連携はリワークスタッフと相談しながら実施します。
(3)リワークの卒業、職場とリワークとの併用、そして復職へ
参加後期は参加開始時と比べて、グループ全体の雰囲気が変化しているはずです。一緒にリワークで時間を過ごした仲間が、先に復職を決めて卒業しているかもしれません。自分より後に入ってくるメンバーも増えているでしょう。自分がリワークで得た学びを、新メンバーに伝えたいと思えるかもしれません。復職が現実になる達成感と不安、さらにはリワークを喪失する悲しみや、リワークから離れる不安も経験されるでしょう。復職は同時に、メンバーおよびスタッフとの別れでもあります。リワークでは、この別れの作業も大事な心の仕事だと考えています。
復職を控えたこの段階では、職場の方と復職に関して話し合える関係を持てていることが必要です。多くのメンバーが職場の方の理解と協力をもらって、復職前の1週間から1ヶ月ほどはリワークを併用しながら少しずつ職場に通う段階的復職(復職トレーニング)を活用します。
しかし、最後まで復職への不安が消えることはないでしょう。復職を前にした今こそ、これまでのリワークでの取組みが生きてくるはずです。つまり、「リワークを卒業し復職する今、どういう不安や悩みがあるのか」を、リワークの中で表現し、コミュニケーションを通じて考えようとする姿勢です。このように、リワークを終了するプロセスでも、深い経験がなされます。リワークからの巣立ちの時、治療的経験がさらに深まることで、復職に向かう真の力が獲得されるはずです。
復 職
③ 復職後の再発予防 ~アフターリワークとフォローアップ面接~ 復職後にも、再休職の危機が起きるでしょう。当院のリワークは、メンバーが復職した後も、再発予防への取り組みをサポートしています。
リワークをやり遂げ、復職できた。大きな達成です。しかし、ここからが本当のスタート。職場に戻ってから、いろいろな悩みが出てきます。場合によっては、また職場を休んでしまうこともあるかもしれません。そんなとき、『リワークで学んだことをもう一度思い出せたら』、『メンバーどうしで話し合えたら』、『スタッフに相談に乗ってもらえたら』と思われるでしょう。
リワークでは、「アフターリワーク」と「フォローアップ面接」をご提供することで、復職後もメンバーをサポートしています。
「アフターリワーク」は卒業メンバーに集ってもらって実施する集団プログラムです。「フォローアップ面接」はリワーク終了後に利用できるスタッフとの個別相談です。
実際にこれまでも多くの卒業メンバーがアフターリワークに参加し、メンバーどうしで復職後の体験を共有しながら、仕事を続けておられます。また、復職後もフォローアップ面接でスタッフと一対一で一緒に考えることもできます。復職してからもアフターリワークとフォローアップ面接を活用することで、かつてリワークで体験していた自分自身の気持ちを見つめることの大切さと、それをコミュニケーションすることの重要性に、立ち返りましょう。
復職後の再発予防