心身の健康のためには、安定した睡眠が必要です。
そういう考え方に、異論がある方はいますか?

好きな時間に寝て、好きな時間に起きる。それで特に支障はない、という意見はありますね。
時間割のように管理された生活時間は、無味乾燥で、好きなことができない。そんな話もあるかもしれません。

仕事によっては、決まった時刻に起床就寝できない仕事もあるでしょうから、その人の生活スタイルによっては、必ずしも一定の生活リズムをそもそも実現することができない場合もあるでしょう。

例えば、休職している方が、リワークで復職を目指するなら、決まった時刻に起床就寝する生活の実現を、メンバー全員で目指します。
起床就寝の時間を管理して、一定にすることができることは、心身の健康の土台だと考えているのです。

適切な睡眠時間をリズムよく続けられることによって、身体の疲労回復や、免疫力の向上など、生物としての私たちのメンテナンスが可能となります。

そして、案外見落とされがちですが、こうした睡眠は、心を十分に使うための土台でもあるのです。
リワークもそうですが、心の治療では、心の反応をめぐる経験が大事な要素になります。今まで使っていなかったような心の部分が動き出し、それによっていろいろな情緒経験が生まれます。心の運動です。
そういう心の運動の休息のためには、睡眠が大事です。
そして、動き出した心は、無意識的な睡眠生活によって保護されると同時に、そうした心の経験に意味が生成される機会が与えられます。
心の運動を通じて、私たちがいろんなことを考えられるようになるためにも、睡眠を大事できることがとても重要なのです。

睡眠は、起きていない時間ではありません。
心と体が成長するための時間です。生活の中核です。
無意味で、何もない時間帯などでは決してありません。

もちろん、心の病気になると、睡眠がうまく取れません。心のためにも睡眠が大事だと言いましたが、睡眠が不安定になっていると言うことは、心が脅かされていると言ってよいでしょう。

睡眠を犠牲にしてしまう生活は、本人は好きなことをやっているつもりでも、実際は心と体を蔑ろにしている生活を続けていることだと言えるでしょう。
心の治療で心をたくさん使うことを通じて、睡眠を大事にしたいと思えるようになりたいものです。