夏本番という感じで、暑い日が続いていますね。

さて、いまさらながらですが、リワークは、休職された人達が集まって、リワークに日々通いながら、もう一度職場で仕事ができることを目指す、グループでの治療的プログラムです。

リワークのメンバーはみな、休職しているということで、同じ体験を持っています。

しかし、「休職をどう感じているか」ということに関しては、個人個人で固有の感じ方があるでしょう。

例えば、「会社から過酷な仕事を強要されて、望んでもいない休職に追い込まれた」という風に思っている人にとっては、休職したことで会社への怒りがあることでしょう。
「上司からパワハラをされて、職場に行けなくなってしまった」と思っている人は、この休職はその上司のせいだ、と思うことでしょう。

こうした場合は、休職の原因が当人には最初からはっきりしています。その原因は、会社なり上司なり、自分の外側のものだということになります。原因とされる会社や上司は、自分を休職に追い込んだ加害者であり、休職した自分は、被害者ということになるでしょう。
こういう風に自分の休職を考えているのなら、構図としては、はっきりすっきりしています。

ただ、そういう風に割り切れるような休職ばかりとは限りません。

特に、リワークに日々参加して、メンバーとともに休職について振り返り、自分のことを考えていくと、多くの人は、休職の原因は一つに限定されないと考えるようになるでしょう。

確かに、恐い上司や気の合わない同僚がいたりして、それがとてもストレスになっていたこともあるでしょう。仕事の量が膨大で、残業続きであったこともあるでしょう。
もし、自分の職場がそういう環境でなかったら、自分はひょっとしたら休職せずにすんだかもしれないと思うこともあるでしょう。

しかし、なぜ休職したのかを、いろいろと時間をかけてリワークで振り返っていくと、原因は自分の外側だけでなく、自分の内側にもあることに思い当たるかもしれません。
例えば、自分自身に独特な対人関係のパターン(特に、人間関係がうまくいかなくなるパターン)があり、それが職場で起こっていたことに気付くこともあります。
自分の考え方が極端であったり、柔軟性がなくて、実際に職場で起こっていたことを曲解して受け取ってしまっていて、気分が一層落ち込んでしまったことに気付くこともあります。
職場で仕事をする上で、自分のコミュニケーションの取り方に何らかの弱点があって、上手く集団に適応できなかったことに思い至ることもあるでしょう。

そう考えていくと、職場環境にあった休職の原因と、自分の内側にあった休職の原因との両方に目を向けていくようになります。その両者の相互作用によって、自分が休職した事態を考えていくことにもなります。


「職場に原因がある、職場が悪い」という考えでは割り切れないようになると、「休職したことは恥ずかしいことである」という風に感じられるときも、ときにはあると思います。
休職した自分を責めることもあるでしょう。
罪悪感を感じることもあるでしょう。
休職したことそのものが、悩み種となります。

休職したことが恥ずかしいという気持ちは、その人にとって本当に感じているものです。

恥ずかしいという気持ちの内実は、様々だと思います。
同僚が仕事をしているのに、自分は職場から離れていることを思って、恥ずかしと思う方もいるかもしれない。
仕事を休んでいる、ということそのものが、恥ずべきことだと感じる人もいるかもしれない。
休職にまつわる恥ずかしさや後ろめたさは、すぐに打ち消そうとしても上手くはいかない感情のように思います。
自分が恥ずかしいと感じていることそのものを、リワークに参加しながら、スタッフ含めて一緒に考えていくことが、大事なことだと思います。

恥ずかしさの背後には、その人が自分で長年にかけて作り上げてきた価値観が作用していることもあります。その価値観が、休職している自分を断罪しているかもしれない。

また、自分の弱い部分、不都合な部分を防衛しようとする試みが、恥ずかしさという感情と関係していることもあります。このときは、休職することになった自分にある弱みや問題点について、その人が考えることが辛くて、それを防ごうとすることで、恥ずかしいという感情が湧いているのかもしれない。


こうみてくると、休職にまつわる恥ずかしさという感情を、素直に認めること自体、なかなか苦しいことだとわかります。

ただ、休職していことの恥ずかしさや後ろめたさを考えられるようになったら、それを出発点にして、見えずにいた自分のことを知ることもできるし、復職してからも、役立つように思うのです。

そういうことを考えられた経験を持つことは、どういうかたちでその方が仕事に戻るにせよ、不都合な自分にも目を向けられる強さを持つことに繋がると思います。





住所: 〒541-0054  大阪市中央区南本町2−2−9 辰野南本町ビル1
電話 : 06-6226-7463