新年度が始まり、まだまだ新生活への切り替えを難しく感じている方も多いのではないでしょうか。気温も暖かくなり、少し前まで上着は必須であったのに日中は長袖では暑いくらいですね。切り替えの時期、色々な世界に触れる時期でもありますね。

今日は、リワークプログラム内にもあるアートセラピーのことをお話ししたいと思います。アートセラピーは月に1度(2度ある月もありますが)行なっているプログラムです。アートと名前のついている通り、『アート(芸術)』をメインとしています。内容は月ごとに変わりますが、メンバーの皆さんには描画や立体物の作成、文章執筆などの創作活動に取り組んでいただいています。

何故アート?と疑問を感じる方は多いでしょう。リワークプログラムとしてのアートセラピーでは、創作活動に取り組む中で、『自分』を知ることを大事としています。想像してみてください。例えば、一枚の用紙に心に浮かぶ景色を描く場面があったとします。その時、私たちは考えると思います。用紙の向きや、どのような景色を載せるのか、描くアイテムの大きさ、筆圧の強弱、彩色の具合、時間配分、微調整…実に色々なことを考えていきますが、その考える作業に自分が表現されます。どのように作業に取り組むのか、何を表現したいと思うのか。自分のオリジナルな『世界』がそこには表現されていくのです。

また、『自分』を知ることだけではなく、『相手』を知ることも同じくらいに大事だと考えています。同じテーマに取り組んでいても、量産されるように同じ作品が並ぶことはありません。自分を通して表現されたものが作品として生まれること、それは自分の内的な世界を外へと出現させることです。プログラム時間内で完成した作品の鑑賞会も行なっています。それは、相手の作品=相手の世界に触れることを意味しています。同じテーマであっても、自分とは異なる創作があることを知る。それは、自分以外の視え方・考え方・表現の仕方があるのだと気づくことにも繋がります。その気づきが他者理解を深めていきます。

会話という意識的なものではなく、アートだからこそ表現されるその人の世界があります。アートは、分かりやすいものではありませんし、よく分からない・掴みにくいと感じるものでしょう。それは、まさに私たちの心だとも言えるのではないでしょうか。私たちの心というのは、よくわからないものです。よくわからないけれど、自分と切り離せない、一生の付き合いをしていくもの。頭の中で考え始めるとゴールが見えない苦しいものですが、表現をしてみる、つまり外に出してみることに取り組んでみる。主観的に創作できたものを、今度は客観的に見てみる。そうすると、自分でも見えていなかったところに気づくこと、新しい自分の発見につながる体験や改めて自分を再認識することもあるでしょう。そうすると、少しだけ、頭の中でぐるぐると考えていくよりも、違った感覚を実感されるかもしれません。

アートという営みの中、私たちが言葉では形容し難い曖昧な『自分の世界』について触れることを、創作を通じて唯一無二の経験として味わってもらいたいと思います。新生活に置かれている、このブログを読んでいるあなたの心の世界は今、どうなっていますか?目紛しく時間の過ぎ行く日々の中だからこそ、自分の世界に触れることをしてみるのも、良いかもしれませんね。