リワーク・プログラムCRESSは、2012年7月に始まりました。

今年2022年7月で、CRESSは10歳になります。

最初は週2日で13時半から16時でした。2012年9月からは週2日は変わりませんが、10時〜16時に延長しました。これは、現在のCRESSの始業と終業時間と同じです。

ここからは、開催日数が増えていきます。2012年10月から週3日、同年11月から週4日、そして2014年5月から週5日になり、現在のCRESSの週5日で10時〜16時になりました。

この10年間(2012年7月〜2022年6月)で、338人の方が、CRESSに参加されました。

338人の方が参加された10年間によって、示唆されるものがたくさんあります。

一つは、「数」が物語るものです。これは統計的な意味を持ちます。

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338人の参加者のうち、リワークを途中でドロップアウトせず最後までやり通して卒業されたメンバーは249人(74%)、途中でリワークに来られなくなり、リワークに復帰できずにそのまま中断となったメンバーは74人(22%)、そして現在リワークに在籍されているメンバーが15人(4%)、それぞれおられます。

リワークをドロップアウトしてしまう参加者が22%いるという事実を、私たちスタッフは重く受け止めています。どの参加者も、最後までリワークをやり通して卒業し、復職を実現してもらいたいと、私たちは思っているからです。

個々の中断の背景を、しっかり私たちスタッフは考える必要があります。CRESSという職場に行けなくなり、退職してしまったのですから。そして、中断されたメンバーに、なぜCRESSという職場を辞めることになってしまったのか、考えてもらえたらと思うのですが、それは難しいことになってしまいました。

中断が22%起きるという10年間の事実から、リワークをやり通りて卒業すること自体が、決して簡単な仕事ではないということも、おわかりいただけると思います。CRESSというグループの中で、自分を見つめることそのものが、復職が大変なのと同様に、とても大変な仕事でもあるのです。

卒業された249人のメンバーの中には、「途中でリワークを中断したけれども、中断期間を経てリワークに復帰し、最終的には卒業したメンバー」(復帰メンバー)が15人おられます。これはつまり、CRESSという職場が辛くて途中で休職したけれども、CRESSに復職し、最後まで仕事を続けて卒業された参加者が、15人おられることを意味します。

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CRESSの卒業メンバー249人のほとんどは、休職した時と同じ職場への復職を果たしています。元の職場に復職することは、CRESSの参加者が目指す目標でもあります。


実際の人数で言うと、元の職場に復職された卒業メンバーは、249人中、237人(95%)です。

しかし少数ながら、違う転帰になった卒業メンバーもいます。

転職してCRESSを卒業したメンバーが5人(2%)休職状態あるいは無職の状態で卒業したメンバーが7人(3%)おられます。

CRESSに参加した方が、元の職場への復職ではなく、転職を目指すことになることを、みなさんはどうイメージされるでしょうか。

休職した職場は、苦しい場所です。嫌な場所でもあるでしょう。そういう元の職場に戻らず、転職でリセットできるなら、良かったのではないか、と思われる人もいるかもしれません。

次の内容は、「数値」ではなかなか分からないことです。転職された5人のメンバーのCRESSでの経験の中身を知らないと、データだけ見ていても、その内実はわかりません。元の職場を退職されて、転職を目指すことになるメンバーは、CRESSの中で、大きな試練を迎えます。周りは、あの苦しい職場に戻ろうとしている。CRESSは、そういう人たちが集まって、自分に向かい合っている場所なのです。

『その中で、自分は、職場を辞めて、新しい職場を目指そうとしている。みんなと目指すところが違い、問題意識を共有できなくなる。みんなとともに、このCRESSという職場で、転職組の自分は果たして、本当に一緒に心の仕事ができるのか。』

この悩みにぶつかります。むしろ、CRESSの中で転職をする人は、その悩みにぶつかり、葛藤する必要があります。実際に、5人のメンバーは、そういう葛藤を経験し、CRESSで心の仕事をやり通したところがあります。その時、転職はリセットではなく、休職し退職した弱い自分に向き合う経験になるのです。

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卒業メンバー249人のCRESS在籍期間(リワーク初日から最終日までの日数)の平均在籍期間は、223日です。つまり、卒業メンバーは平均すると7ヶ月半ほどでCRESSを卒業していたことになります。

卒業メンバーの平均在籍期間が7ヶ月半であるという事実は、何かを物語ります。

休職した自分にリワークで向き合って復職するには、それ相応の時間が必要になった、という意味もあるでしょう。さらには、厳しい職場に戻るのは辛いことなので、CRESSという安全な場所に長居している意味もあるかもしれません。

在籍期間のデータを見るときに大事な視点は、「数字」としての在籍期間ではなく、その時間の中でメンバーが再発予防できる自分に変わるために、どれほど中身ある経験を得たのか、という視点です。これも、「数値」だけ見ていては、分からないことです。

今の自分が、このリワークをどういう風に経験し、使っているのかを、しっかり考えることです。

自分自身を考えることなく、早く職場に戻ろうという気持ちだけで、リワークを早く切り上げようとしているのかもしれません。

早く復職しようとしていたけれど、CRESSに参加することで、自分は休職前と変わっていないと気づいて、このままの自分では卒業できないと、在籍期間が長くなっているのかもしれません。

あの職場に戻るのが嫌で、働くのが嫌で、CRESSを現実逃避の場所にしていて、在籍期間が長くなっているのかもしれません。

リワークの時間の中で、自分がどういう経験をしているのかを考えていくことは、職場での自分を見つめ、再発予防している自分の姿でもあります。



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今回紹介した「数値」は、10年間の積み重ねがあって、何らかの意味を帯びる数値です。

数値という客観的な事実が何を物語るかを考えるためには、一人ひとりのリワーク経験を知っていなくてはいけません。

私たちスタッフは、10年の時間が出した数値を、個々人の復職に向けたリワークでの取り組みという中身ある経験につなげて理解していきます。