リワークCRESSではルービックキューブをプログラムに取り入れています。月に一度、マニュアルを見ながら黙々と取り組むメンバーさん(時にはスタッフも)の様子から、このパズルが持つ不思議な魅力を感じずにはいられません。
 ルービックキューブはE.ルービック博士(専門は芸術及び建築学)によって開発され、1977年に彼の母国ハンガリーで発売されました。その後、世界で発売され1980年代にかけて一大ブームを巻き起こしました。1980年ごろには日本でも大きなブームが起きました。当時のことを覚えている方も多いでしょう。一家に一個は必ずあった、という表現は決して大げさではありません(非純正品が多く出回ったことでも知られます)。
 その後しばらくして大きなブームは去っていきましたが、2000年前後からまた世界中で静かなブームが起きています。インターネットで動画や解法が共有されるようになったことがその大きな要因です。スピードを競う大会が世界でも日本でも継続的に行われ、若いプレーヤー(キュービスト)が脚光を浴びています。不思議なことに世界記録を更新するのは、ほとんどが10代の若者です(驚くべきことに6面完成が5秒を切ります)。成人になると何らかの能力が失われていくのでしょうか。
 CRESSでは、マニュアルの助けを借りながらも、6面完成者が続々と誕生しています。なんと半数近い方が、卒業までには6面完成の瞬間を味わっています。10代のキュービストたちとは異なり、ある程度年齢を重ねた(人によっては身体や脳の衰えも感じている)今において、新しいスキルを学び、マスターできたという達成感は思いのほか大きな手応え、自信にもなるようです。
 仕事も心の治療も、そのゴールははっきりせず、完璧という状態も想定しづらいものだと思います。対してルービックキューブは、完成という誰が見ても明らかな、紛れもないゴールが存在します。それは、誰もが納得いくひとつの答えが見出しにくい社会に生きる、我々の癒しとも成り得るのかもしれません。