在籍期間には違いがありますが、休職期間をCRESSで共に過ごしたメンバーであることは同じです。
CRESSでは、メンバーさんがリワークを終えるとき、「卒業式」をするようにしています。
「卒業式」というと、学校の卒業式を連想されるでしょう。
卒業されるメンバーさんに向けて、各メンバーが「贈る言葉」を伝えるのです。
餞別などのモノのやり取りはありません。
モノではなくて、卒業されるメンバーに、これからもリワークに残って復職を目指すメンバーが、言葉を贈るのです。
贈る言葉は、「リワークで過ごした日々の思い出」もあれば、「そのメンバーに伝えたかった思い」、「復職後に気をつけてほしいこと」など、いろいろです。
そして、贈る言葉をもらった卒業メンバーは、今度は、そのメンバーに言葉を返します。
CRESSの卒業式は、リワークの卒業式ですから、メンバーの「復職」を祝う意味があります。
それだけでなく、卒業式は、お別れの作業でもあります。
そのメンバーとともに過ごした日々を想い、そのメンバーとのお別れを悲しむ。
復職を祝いたい想いと、お別れしなくてはいけない悲しさを、ともに味わう。
だから、卒業式は、心をいっぱい使う、お別れの作業です。
私は、リワークの卒業式で悲しみを深く感じられるならば、そのメンバーは、とても大事な心の仕事にリワークで取り組んでいたことの一つの証明になると思います。
CRESSで卒業式をするようになったきっかけがあります。
そのきっかけを作ってくれたのは、リワークが開始した当時在籍されていた或るメンバーさんです。
リワーク開始時、なんでも初めての経験でした。
CRESSで初めて復職を決めたメンバーさん。
当時、私たちスタッフは、復職を決めたメンバーさんに対して、リワークグループとして、何をしたらいいか、わかりませんでした。
もちろん、復職を決められたことが嬉しかった。
復職をお祝いしたかった。
そして、お別れすることを、悲しく思いました。
CRESSで、2番目に卒業を決めたメンバーさんが決まった時だったと思います。
5年以上昔の出来事です。
メンバー全員に、卒業を決められたメンバーさんをアナウンスしました。
その後、或るメンバーさんが、私に話たいことがあると言われました。
「卒業を決められた方と過ごすための、お別れの時間を作ってもらうことはできないでしょうか。」
この方の、この言葉が、CRESSの卒業式のきっかけとなりました。
ともにCRESSで過ごした仲間が復職を決めて、リワークを巣立っていく。
そのとき、私に「お別れの時間を作って下さい」と言ってくれたメンバーさんは、わかっていたのでしょう。
リワークの仲間がリワークを巣立つときには、お別れのための作業が必要なのだ、と。
私は、このメンバーさんに、教えられました。
それ以来、卒業式を私たちはするようにしています。
卒業式に向けたリワークでの残りの時間を、大事に過ごしてもらいたいのです。
卒業式は、CRESSにとって、どんなプログラムとも同じように、大事にしたいものです。心の仕事です。