リワークプログラムCRESSは、新型コロナウィルスの影響で、4月7日から限定的な開催に移行していました。
集団を前提とした復職プログラムであるリワークの運営が、難しくなったためです。
この間には、集団プログラムを完全に停止した期間があります。
そして、リワークルームに入る人数を減らすために、各メンバーが週2回、各回あたり半日で参加する期間も設けました。
それが、半日ずつ毎日の開催にまで増やしていき、現在は通常の1日6時間の毎日開催に戻っています。

現在、週当たりの開催日数と時間は、新型コロナウィルスの前のリワークと同じになりました。

しかし、コロナ前と後で、リワークでは何かが大きく変わりました。
コロナ後には、リワークという環境の衛生面への配慮と注意が、それ以前には比較にならないくらい高まりました。
各メンバーにおいては、復職に向けて健康的な生活を目指すというこれまで共通目標に加えて、ウィルスを防御する生活の実現と維持が必要になりました。
コロナウィルス以後は、今まで当たり前だった生活様式や行動に対して、私たちは立ち止まって考え、判断する必要が生じたのです。

今の私たちにとっては、マスクをすることは、出勤のための服を着ることと同じくらいに必要になりました。
オンラインでの会議や、リモートでの仕事もそうです。

リワークもそうです。
お昼休みには、机をお互いにくっつけて、おしゃべりしながらご飯を食べる。コロナ前は、それは当たり前の光景でした。こうした自由な交流によって、大事な経験が生まれていました。この当たり前のようなお昼休みの時間があることで、メンバーの中から、なかなか皆と話せなかったり、グループは入れないという経験を持つメンバーが出てきます。それは居心地の悪い苦しい時間になったりします。CRESSでは、そういう経験も一緒に考えることで、そのメンバーが自分を知ることにつながると考えていました。

しかし、コロナ後のお昼休みは、食事の時間は会話をしない、という新しい行動が必要になりました。
交流が生まれる環境を作ることで、楽しくなったり、苦しくなったり、というそれまでのCRESSの昼休みではなくて、そもそも食事の時間は話さない、となってしまったのです。

リワークのプログラムもそうです。
今までだったら、当たり前のように机をお互いにくっつけて、近い距離で話し合ったり一緒に仕事をするプログラムに対して、立ち止まって考えなくてはいけなくなりました。
例えば、グループ作業というプログラムです。リワークの集団を職場の集団に見立てて決められた納期までにプロジェクトを完成させるプログラムです。グループ作業の成果物は、当院のホームページにもアップしています。
グループ作業では、リワークメンバーの中からリーダーなどの役職を選出して、組織を作ります。メンバー同志の関係が、仕事の関係になる時、そのメンバーの職場でのあり方が、グループ作業で表現されます。グループ作業の中で、人の話を聞かないで、自分の考えだけで仕事を進めるようなメンバーさんは、職場でもそういうメンバーさんだったのでしょう。そして、普段の対人関係の特徴も、そうなのでしょう。グループ作業の時間には、メンバー各自が持っている特徴が、特別はっきりと出てきます。「特別はっきり出てくる」ということの意味は、そのメンバーと一緒に仕事をしている相手の人が、そういう特徴を感じる、という意味です。「この人は全然、人の話を聞かないで、自分のやり方でドンドン進めるなあ。」と、一緒に働くことになったメンバーが、感じるのです。

コロナ前には、そういう近い距離での接触を前提としていたグループ作業も、コロナ後には、当たり前には出来なくなりました。
1日フルのリワークが再開した現在、それまでのグループ作業のやり方を見直して、近い距離に移動せずとも、グループでプロジェクトに取り組むにはどうしたらいいか、模索しています。

しかし、コロナによってプログラムの実施の仕方が変わっも、変わらないものがあります。
それは、そのメンバーが抱えているものです。
例えば、職場で取り組んでいるプロジェクトが曖昧模糊としていて理解できなくなると、不調になって欠席するようなメンバーは、リワークで同じような状況を経験したら、不調になる。
これは、変わらないそのメンバーの特徴です。
むしろコロナウィルスでリワークが限定的になっていた期間には、メンバー各自が抱えていた特徴が、見えにくくなっていたと言っていいでしょう。
現在、リワークに集団的な要素が徐々にではあれ、増えてきています。そうした時、これまでコロナウィルスの脅威によって見えにくくなっていた、自分自身の中の困った部分が、リワークの中で出てきている。
そういう風に、メンバーが経験できているかどうかに、私たちは注目しています。
リワークの中で出てきた自分の姿を、今とらえて、それを一緒に考えていきたいと思っています。