●睡眠障害とは
私たちは一日のうちの長い時間を睡眠に費やします。当然ですが、睡眠をとっている間は他の活動は出来ません。動物にとっては外敵から無防備になってしまう行為でもあります。それでも私たちが進化の課程で睡眠を切り捨てなかった理由は、それが健康に生きるために欠かせない行為だからです。睡眠の役割は、毎日の疲れをとり、体調を整えることだけではありません。睡眠は、脳の休息とメンテナンスのためにも必要な行為です。例えば、スポーツなどで上手く出来なかったことが、一晩寝たらあっけなく出来た経験はありませんか?勉強も一夜漬けより、きちんと睡眠を取った方が学習効果は高くなることが分かってきました。これらのことは、日中にインプットされた情報を、脳が睡眠中に整理して、より使いやすい状態にしているためと考えられています。もし睡眠が十分とれない状態が続くと、脳の疲労が取れず、集中力が落ちたり、イライラしたり、憂鬱になったりと様々な精神の失調をきたすことになります。こころの病気は脳が疲れてしまった状態であり、治療のためには良質な睡眠が必要です。しかし、あまりに脳が疲れ切ってしまうとかえって眠れなくなり、体調は悪化します。このためこころの病気の治療において、睡眠障害はまずケアしなければならない症状となります。
●睡眠障害の治療
睡眠障害の治療は、不眠の原因が何によるものかを考えることから始めます。こころの病気や心配事が背後にあるならば、そのケアが並行して必要です。睡眠時無呼吸症候群のような身体的原因によるものについては専門医の受診が必要です。適切な睡眠環境を整えることや、生活習慣の見直しを行うことは何より重要で、眠れないのでスマートフォンを見たり、お酒を飲んだりすることは症状悪化の原因にもなります。それでも改善が得られない場合、薬物療法も行います。近年の睡眠薬は、自然な眠りに近く安全性の高いものが利用できるようになっております。その方の不眠症のタイプに合わせた薬を選び、用法、用量、服用する期間を医師と相談しながら調節してゆくことが大切です。