●強迫性障害とは
「きちんと戸締りしたかな?」とつい不安になってしまう経験は誰にでもあることです。しかし何度も確認を繰り返して、なかなか外出ができなくなると、生活に大きな支障をきたすことになります。こういった状態を習慣的に認める場合、強迫性障害かもしれません。強迫性障害の症状には「強迫観念」と「強迫行為」があります。「きちんと戸締りをしたかな?」のような、ふと頭に浮かぶ不安が「強迫観念」です。この不安を打ち消すため、何度も施錠したり、人に確かめてもらったり、写真を撮ったりするような行動を「強迫行為」といいます。普通は一度確認すれば安心できるはずなのに、強迫性障害の方は、しばらくするとまた不安になり、自分でも無意味で度を越しているとわかっているにもかかわらず、強迫行為を繰り返してしまいます。
強迫観念には、他にも、汚染に関する恐怖(感染したのではないか?)、加害恐怖(他人を傷つけたのではないか?)、正確性や対称性へのこだわり(決まった順序や配列へのこだわり)など様々なものがあります。
強迫性障害になると、自分の想定外の悪いことが起きることを恐れ、なんでも自分でコントロールしておかずにはいられなくなりますので、完璧主義で几帳面な人の病気ではないかと誤解されますが、この病気の原因はまだ正確にはわかっておりません。性格、遺伝要因、環境要因、生物学的な要因など様々な要因が影響していると考えられています。
●強迫性障害の治療
治療は出来るだけ早く受けることが重要です。この病気は強迫行動を行えば行うほど不安を感じる対象が広がってゆき、強迫行動もさらにエスカレートしてゆくという悪循環を引き起こします。家族を巻き込むこともあり、日常生活全体が病気に縛れた不自由なものになってしまいます。
治療のはじまりは、抗うつ薬である SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを内服することが一般的です。なぜならば頭の中は強迫観念でいっぱいで混乱し、冷静に考えることができなくなっているからです。
ある程度不安が落ち着いてくると、「曝露反応妨害法」という認知行動療法を組み合わせることが効果的です。「曝露」というのはあえて強迫観念を呼び起こす状況に身を置くことです。例えば、汚いと思っているものにあえて触れることです。「反応妨害」は、手を洗うという強迫行為を我慢してもらうことです。最初は辛く思いますが、我慢しているうちに、不安も徐々に減ってゆき、強迫行為をしたい気持ちも減ってゆくことが実感できるようになります。
強迫性障害の治療には、時間がかかることが多く、症状も良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いため、根気よく病気と向き合うことが大切です。