●社交不安障害とは
大勢の人の前での発表や、それ程親しくない人と会話する際に緊張したり、その前から不安になってしまうことは自然なことです。しかし、そのような場面で現れる身体の症状(息苦しさ、動悸、発汗、震え、赤面など)が著しく、その苦痛からこうした状況を避けてしまうなど、生活に支障がでている場合、社交不安障害かもしれません。
この症状の方は、「緊張しないように」と意識すればする程、緊張や体の症状はより強くなります。「恥ずかしい」「人からどう思われているだろう」とつらい気持ちになり、そのような場面を回避するようになります。その結果、自分の意見が言えないために仕事で評価されない、うまく話せないために人間関係で消極的になる、といったつらい状況に陥ることになります。なかには、自信を失い、人前に出られなくなったり、仕事に行けなくなったり、うつ病の症状が現れる人もいます。
●社交不安障害の治療
治療の目標は、「緊張しなくなること」ではありません。緊張は誰にでもある自然なことです。緊張を、恥ずかしいこと、あってはならないこと考え、他者からどう見えるかを意識しすぎる程、症状はひどくなります。ですので、治療の目標は緊張についての考え方を変えること、「緊張したっていい」と考えられるようになることです。
そのためには、どうして対人場面で不安になるのかということを少し掘り下げて考えてみる必要があります。他人が緊張している様子を見ても、あくる日にはそんなことは忘れているのに、自分が緊張した場面のことは、「大変なことになった」といつまでもクヨクヨ忘れられない方がいます。そういう方は、「自分は注目されている」「人から良く見られたい」という自己意識が強すぎるのかもしれません。
実際の治療では、このような考え方を少しずつ変えてゆくような精神療法と薬物療法を併用してゆくことが多くなります。薬は飲まずに治したいと希望される方もいらっしゃいますが、苦手意識を変えてゆくためには、その場面で安心できる経験も必要です。薬を使うことで「以前より緊張を感じなかった」と経験できれば、次の機会では、回避することなく、自分を表現することにチャレンジしやすくなるでしょう。